7月4日(金)、神奈川県立かながわ労働プラザにて、NPO法人湘南バリアフリーツアーセンター主催/日本バリアフリー観光推進機構共催のユニバーサルツーリズム推進フォーラムが開催されました。
黒岩祐治神奈川県知事の歓迎挨拶の後、観光庁鈴木貴典審議官他6名が登壇されました。
●観光庁鈴木審議官 「これまでの観光政策の潮流」「ユニバーサルツーリズムの必要性の高まり」 「ユニバーサルツーリズム推進に向けた取組み」
国の観光政策関連で制定された法律にも触れながら、時系列でユニバーサルツーリズムをどのように推進してきたかを解説されました。
東京2020オリンピック・パラリンピックを契機にユニバーサルデザインの推進の一環で「心のバリアフリー」も推進された。
2005年からなだらかに人口は減少しているが旅行消費額が一定だったのは元気な高齢者が多かった、しかしコロナ禍を経て若年層の旅行需要は回復しているが70代以上の戻り方が鈍い。
ユニバーサルツーリズムの推進は事業者に対して義務的にやってもらうことは理想かもしれないが、取組むことのメリット(収益増、従業員の満足度向上等)をどう広げていくかが課題と締められました。
〈令和7年度観光白書・ユニバーサルツーリズム関連〉
●中村理事長 バリアフリー観光で集客アップ
三重県・伊勢志摩で20年以上前に取組んだバリアフリー観光は、増客(誘客)ために開発した。
障がい者、高齢者、乳幼児連れを含むマーケットは周辺コミュニティ(家族等)を含むと、健常者のみの観光マーケットより大きい。
高齢者は時間、お金に余裕があり、観光地が混み合う土日祝(125日/365日)ではなく平日(240日/365日)を埋めてくれる。
伊勢志摩バリアフリーツアーセンターは、当事者と観光事業者をつなぐ役割を担ってきた。
伊勢観光の中心「伊勢神宮」は観光施設ではなく信仰の地、往復1.6kmの砂利道を徒歩での参拝が基本、伊勢おもてなしヘルパーの拡充で障がい者・高齢者の参拝をサポート
〈令和4年度観光庁看板商品創出事業「伊勢おもてなしヘルパー拡充」〉
第27回全国菓子大博覧会(伊勢)で来場者のバリアフリー対応の経験(ノウハウ)を、開催中の大阪・関西万博のユニバーサルツーリズム対応に提供した。
2027年横浜市で開催されるGREENⅹEXPO2027(花博)でも活かせると解説されました。
●北村主事 神奈川県のユニバーサルツーリズムの取組み
令和5年3月に制定した第5期神奈川県観光振興計画の中で、ユニバーサルツーリズム促進のための環境整備が施策として掲げられ、令和6年度の取組みから令和9年度のGREENⅹEXPO2027(花博)までの計画を発表されました。
令和6年度:バリアフリー観光モデルコースの策定等(モデルコース策定・モニターツアー・セミナー)
〈令和6年度の取組み〉
令和7年度:バリアフリー観光モデルコースの策定等・飲食店のユニバーサル情報の発信強化等
令和8年度:バリアフリー観光モデルコースの策定等・飲食店のユニバーサル情報の発信強化等・宿泊施設のユニバーサル情報の発信強化等(予定)
令和9年度:上記を踏まえたGREENⅹEXPO2027(花博)の来場者へのPR、パンフレット作成等(予定)
●池田部長 横浜市のユニバーサルツーリズム
横浜市は障害等の有無や年齢にかかわらず、すべての人が安心して旅行を楽しめる都市・横浜を目指し、関係団体や事業者と連携して、受入環境の向上やプロモーションを実施すること。と、ユニバーサルツーリズム推進事業の目的を掲げている。
2019年ラグビーW杯の2年前2017年から着手し、会場となる日産スタジアムのある新横浜、山下公園周辺のモデルコースが策定された。
同時に施設のバリアフリー情報の調査も行いサイトで発信している。
〈横浜観光バリアフリー情報サイト〉
最後に、直近のトピックスとして国際盲導犬学会(International Guide Dog Federation)2026が来年5月14日(木)〜17日(日)、パシフィコ横浜での開催が決定したと発表されました。
参加者総数300名、23か国から約200名の視覚障がい者(盲導犬ユーザー)が横浜を訪れる予定です。
●佐藤マネージャー 箱根DMOの取り組み
令和3年、観光地箱根の現状と課題を精査し
目的:中長期的な視点による「持続可能な観光地としての『箱根ブランドの向上(=付加価値を高める)』」
課題:国内外の観光需要が多様化している中にあって、高齢や障がいの有無に関わらず誰もが気兼ねなく旅行できる「やさしい観光地」である為に現状の受入環境ではまだ不十分な面がある。
と整理しユニバーサルツーリズム・プロジェクトがスタートした。
当初メンバーはDMO、箱根町、事業者で構成していたがユニバーサルツーリズムに関しては素人だった。その後、専門家(社会福祉協議会、障がい当事者、リハビリテーション協議会)に参画してもらい、当事者も交えた実証を行いモデルコース冊子、動画等を制作。
私が強く共感したのは、「情報が当事者に届いていない」という課題から、制作した冊子を関係各所(高齢者施設等)に配布されたという話です。
その後、域内観光事業者向けのセミナー等も定期的に開催し啓発も行う。
このような取組みの結果「世界の持続可能な観光地TOP100選」で世界1位を獲得。
昨年から「はこねOnsen-Helper」(温泉入浴介助サービス)もスタート。
日々訪日客も大勢訪れる国際的な観光地の箱根町がこれほど「官民一体ALL箱根」でユニバーサルツーリズムを推進しているという事、全国の観光地に知っていただきたいと思いました。
〈箱根ユニバーサルツーリズム〉
●大澤プロジェクトリーダー Universal MaaS
2018年7月、全日空(ANA)グループ社員による社内提案からスタート。
障がいや高齢など何らかの理由により移動にためらいのある方々が快適にストレスなく移動を楽しめるよう、ユニバーサルデザインの発想でDoor to Doorの移動を1つのサービスとして提供。
Universal MaaS推進の意義を
社会的価値の創造:移動困難層の課題解決により旅行や移動を誰もが楽しめるように
経済的価値の創造:新たな移動需要の喚起により観光・移動関連マーケットの拡大
業務効率UP!品質向上!:自治体・事業者の負担を減らす
地域創生:誰もが移動できる住みやすい街に
と掲げ、「一括サポート手配」「ユニバーサル地図/ナビ」サービスを実証を繰り返しながら拡充中。
〈Universal MaaS〉
●栗原代表取締役 大阪・関西万博のユニバーサルツーリズム
2023年12月、三菱UFJ銀行を中心とするMUIC Kansai(観光イノベーション拠点)で誰もが楽しめる万博を目指すLET’S EXPOがスタート。
大阪・関西万博に
・サポートがあれば行ける、行きたい人向け:会場内サポート(車いすを押す・視覚障がい者の手引き)
・行きたくても行けない人:オンラインツアー、バーチャル万博サポート
をサービスとして構築。
〈LET’S EXPO〉※クリックすると表示されます。
開幕から2ヶ月半で300名超をサポート。
視覚障がい者の利用が6割:夢洲駅までは全盲でも単独で来られる、そこから会場内のサポートがあれば一人でも万博を楽しめると好評。
介護施設団体:少ないスタッフで大勢の利用者を万博にお連れするのは難しい。会場内で車いすを押してくれる、付き添ってくれる人がいるだけで助かる。
高齢者を含む家族:広い会場、歩いて巡るのは大変なおじいちゃん、おばあちゃんが車いすに乗り、サポートしてもらえると家族も気兼ねなく万博を楽しめる。
単独高齢者:このサポートのファンになり、ヘビーリピーターの高齢者も!
〈テレビ大阪 LET’S EXPO特集ニュース〉
最後に、フォーラムを主催し準備にあたられたNPO法人湘南バリアフリーツアーセンターの榊原理事長の挨拶で閉幕となりました。
office FUCHI 〜オフィス・フチ〜 〈渕山知弘〉
渕山知弘 office Fuchiのサイト 東京2020オリンピック・パラリンピックを契機に宿泊、交通、観光のバリアフリー化が加速し「心のバリアフリー」が推進されています。 大手旅行会社で30年勤務し、そのうち22年間バリアフリー旅行、ユニバーサルツーリズムに携わった経験を活かして、全国の自治体、企業、学校等のユニバーサルツーリズムの推進をさいたま市の見沼田んぼの片隅からお手伝いしてます。
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