福山市 視覚障がい者ツアー販売開始!

広島県福山市の旅行会社「福山観光旅行株式会社」(広島県知事登録旅行業第2-68号)より、視覚に障がいがあっても楽しめる福山ツアー

『瀬戸内海シーカヤックと福山・鞆の浦体感の旅 2日間』が発売されました。

※カヌー画像は、奄美大島マングローブカヌーでブラインドカヌーの検証の様子。

この会社は以前からユニバーサルツーリズムに着手していたわけではありません。

今回が初めてのチャレンジですが、私の約20年国内外の視覚障がい者ツアーを企画・運営してきた経験からアドバイスを重ね販売にいたりました。

〈経緯〉

きっかけは、6月8日に福山で開催された「第1回ユニバーサルツーリズムワークショップひろしま」にオンラインで参加したところからでした。

その直後、6月12日にこのワークショップを運営した福山市地域おこし協力隊の河村由実子さん(リハノワ代表)から福山で視覚障がい者にも楽しんでもらえるツアーを企画したい!と相談を受け、6月26日には福山観光旅行の漆川治樹さんを交えて3者で打合せが行われました。

その場で決まったことは

①7月に渕山が現地に入って視覚障がい者ツアーの事を伝える座学、観光素材の見極め、体験を交えた研修の実施。

②9月には募集ツアーを企画したい。

お2人の強い思いがこのスピード感につながっています。

(行政ならここまでで3年かかる話だと思います)

そして、7月21日に現地での研修が開催されました。

研修後からは、2日間のツアー内容の検討

〈ツアー企画〉

・ホテル:視覚障がい者の場合は広いバリアフリールームではなく、客室内の構造を把握しやすいビジネスホテルで単独参加の場合はシングルルームを確保。

・食事:郷土料理や居酒屋など通常のツアーでは案内しない特別アレンジ。

・観光:とことん視覚以外でも楽しめるスポットの洗い出し、工夫。

を確認し合いながら、打合せを重ねてきて8月12日に発売開始となりました。

タイトル:瀬戸内海シーカヤックと福山・鞆の浦体感の旅 2日間

日  程:令和7年9月29日(月)〜30日(火)

旅行代金:JR福山駅発着 お1人様50,000円

ポイント:①鞆の浦でのシーカヤック体験

     ②鞆の浦の路地散策(保命酒の生薬の香りなど)

     ③郷土料理「うずめ寿司、「お好み焼き」昼食と地元居酒屋宴会

     ④開城当時の福山城3D模型に触れて福山城見学

     ⑤触れて乗れる博物館「福山自動車時計博物館」

     ⑥ボンネットバスで市内移動

私が旅行会社にまだ在籍していたとしたら企画したいと思う内容を漆川さんから提案いただき、面白いツアーが企画できました。

〈ツアー販売〉

さて、企画したツアーをどうやって視覚障がい者に販売できるのでしょうか?

一般的には、旅行会社の店頭に置かれた旅行パンフレットやwebで検索して、景色、食事などのきれいな画像や紹介された文章を読んで旅行先を検討しますよね。

見て検討ができない視覚障がい者には、音声で聴いてツアー全体をイメージいただきます。

そこで用意するのが、「声のパンフレット」(左記をクリックで表示されます)。

視覚障がい者の多くはスマホ、PCは画面に表示されるテキストデータを音声で読み上げる設定をされています。

通常は画像ですませる説明や、わざわざ入れない解説などもテキストにして、読み上げた際に2日間のツアーの様子が頭に浮かぶようにします。

上記を開いてご覧いただくと、漢字と仮名が変な混ざり方をしていますが、漢字の誤読をした箇所を仮名に修正しているからです。

例)渕山知弘と記載すると「ぶちやまともひろ」と読み上げるため「ふちやま知弘」に修正。

あとは、数名の視覚障がい者の仲間にメールで情報を送り、メーリングリスト等で拡散をしてもらいます。数日後には全国の視覚障がい者数千名に情報が拡散されているはずです。

視覚障がい者ツアーは知恵と工夫で、パンフレット代、郵送料などをかけることなく無料でツアー販売が可能なのです。

〈手引き(旅行サポート)販売〉

今回のツアーは、JR福山駅までお1人で来ることができる視覚障がい者は単独で申込みいただけるようにしています。

2日間の手引き者を現地で研修として募集するからです。

長年視覚障がい者ツアーの手引きを通じた企業社員研修を運営してきた経験から、多くの参加者の感想でこんな効果があると思っています。

・ユニバーサルツーリズムを学ぶ(視覚障がい者ツアーを通じて、高齢者は?車いす使用者は?と汎用して考えることにつながります)

・伝え力が磨かれる(サポートする視覚障がい者のツアー参加者に景色や食事、体験を言葉で丁寧に伝えることで、自分自身の語彙の少なさに気づかされたり、アレ、コレ、ソレは伝わらないことを痛感するはずです)

・まち中で困っている人に声をかけやすくなる(障がい者のサポート、最初の声がかけづらい方が多いと思います。当事者と接することでそのハードルが下がります)

・日常がユニバーサルツーリズム視点になる(一度研修に参加した人は、点字ブロックに置かれている荷物、歩道と車道の小さな段差、エレベーターの音声案内の有無などにそれまで気にすることが無かったことに『気づき』ます)

今回の引き研修参加者の募集が、コチラです。

視覚障がい者ツアーの企画から販売までのノウハウをここでご紹介しました。
ユニバーサルツーリズムは車いす使用者だけを対象に考えて、坂があるから、階段があるから、建物がバリアフリーじゃないから、と検討すらしていない地域も多くあります。
視覚障がい者ツアーには段差等のハード面のバリアはあまり関係ありません。
知恵と工夫と心のバリアフリーで全国どこでも企画できるので、この記事を参考にまずはこんな着型ツアーから検討してみてはどうでしょうか。

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office FUCHI 〜オフィス・フチ〜 〈渕山知弘〉

渕山知弘 office Fuchiのサイト 東京2020オリンピック・パラリンピックを契機に宿泊、交通、観光のバリアフリー化が加速し「心のバリアフリー」が推進されています。 大手旅行会社で30年勤務し、そのうち22年間バリアフリー旅行、ユニバーサルツーリズムに携わった経験を活かして、全国の自治体、企業、学校等のユニバーサルツーリズムの推進をさいたま市の見沼田んぼの片隅からお手伝いしてます。