12月12日(金)、新宿の京王プラザホテルのユニバーサルデザインルーム(全13室)を見学させていただきました。
今まで、全国で登壇するセミナー等で、国内のシティホテルでも先進的なユニバーサルサービスの取組みとしてご紹介する機会はありましたが、改めて現在の取組みを知る機会となりました。
ご案内いただいたユニバーサルサービス推進担当の中村さんとは、10年以上前に観光庁のユニバーサルツーリズム推進検討会でご一緒した時からのご縁で、2017年第1回東京都アクセシブルツーリズム推進シンポジウムにご登壇いただいたこともあります。
37年前にリハビリテーション世界会議を受け入れた時から改善を重ねながら続く取組みは、すぐにマネできるものではありません。
ただ、様々な配慮を知ることでハード面以外にすぐに取組めることもあるはずで、今回解説いただいたホテルのユニバーサル対応のほんの一部ですがご紹介します。
誰もが宿泊できるユニバーサルルーム
まず京王プラザのユニバーサルルームの考え方は、特定の人(障害者や高齢者)専用の部屋ではないことが前提です。多様なお客様に柔軟に対応できるようにユニバーサルデザインをとりいれ、販売に支障が無い様にしました。
バスルームも、設置してある福祉用具(トイレの手すり、すべり止めマット、シャワーチェア、踏み台、移乗台)をすべて取り外すと通常客室として提供できます。
※便座の後ろに縦じまの背もたれクッションが写っていますが、これは便座と背もたれのすき間を埋めるクッションで必要に応じて設置しているものです。
※上記右上の手すりを外したトイレの状態は「ジュニアスィートルーム」の便座の状態で、上のデラックスルームのバスルームではありません。
車いすや高齢者対応の一部
電動ベッドは高さが48cm〜80cmまで動き移乗しやすい高さに調整できます。(人工関節が入ったリウマチ患者などベッド高くないと移乗できない方もいます)
ライティングデスクの裏側には指で掴めるよう突起があり、車いす使用者が掴んでデスクまでの距離を調整できる工夫がありました。
ワードローブには120cm、170cmの2段階でハンガーを調整でき、車いす使用者が宿泊する時だけ低い位置にハンガーを準備します。
通常床に設置してある冷蔵庫は車いすのフットレストが下に入る高さに設置してあります。かがまなくて良いのは高齢者も助かりますね。
通常冷蔵庫脇の収納に用意してあるコップやティーカップは、車いす使用者が宿泊する時にはライティングデスク上に出しておきます。
室内のテーブルは、支柱が端にあることで車いすのフットレストがあたらないようになっています。
視覚障がい者対応の一部
最近は見ることが少なくなったタイプの電気ポット、取っ手のあるケトルだと手に障がいがあったり高齢者だと持ち上げることができないためこのタイプを利用しています。黒に白抜きの表示は弱視の方にも見やすいデザインです。
アメニティは、輪ゴムの本数でシャンプー、コンディショナー、シャワージェルの瓶の違いがわかるようにしています。
一番左の輪ゴムが付いていないボトルはボディミルクボトルで4種類のボトルの違いがわかるようにしています。
廊下、エレベーター表示版の色のコントラストも弱視の方にわかりやすい配慮です。
部屋番号表示はエレベーターホールも各部屋のドアも触っても痛くない立体プレートが設置してあり全盲の方でも触れて部屋を確認することができます。
敷地内には補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)用トイレが設置されています。
2017年、日本盲導犬協会の50周年式典が京王プラザホテルで開催され、その際180頭の盲導犬の受け入れに対応されています。
聴覚障がい者対応の一部
UDスイッチに切り替えると、音センサーが作動し来客、緊急、電話の際にモニターの表示と客室・ベッドルームの照明が点滅し、ベッド上のバイブレーターが作動します。
聴覚障がい者に利用する方が多いアプリ「UDトーク」がインストールされたタブレットはフロントとつながっていて、文字でやり取りが可能です。
先日開催された東京2025デフリンピックに合わせて国内外の聴覚障がい者宿泊客に対応できるよう制作された指差しボードはホテルのスタッフの方々が考えて作られたそうです。
京王プラザホテルのユニバーサルサービスはハード面のバリアフリー改修や対応マニュアルだけではなく、長年にわたって積極的に障がい者を受け入れてこられたソフト面の経験(喜ばれた対応もお叱りを受けた対応も)の蓄積から現在があることを改めて知ることができました。
※ここでご紹介したのは取組みの一部です、ホテルのサイトではその他の対応も掲載されています。
〈京王プラザホテル ユニバーサルサービス〉
この対応や配慮、考え方は宿泊施設に限らず、観光業(旅行会社、観光施設、観光地、飲食、交通)全般のユニバーサルツーリズム対応に汎用できるはずです。
office FUCHI 〜オフィス・フチ〜 〈渕山知弘〉
渕山知弘 office Fuchiのサイト 東京2020オリンピック・パラリンピックを契機に宿泊、交通、観光のバリアフリー化が加速し「心のバリアフリー」が推進されています。 大手旅行会社で30年勤務し、そのうち22年間バリアフリー旅行、ユニバーサルツーリズムに携わった経験を活かして、全国の自治体、企業、学校等のユニバーサルツーリズムの推進をさいたま市の見沼田んぼの片隅からお手伝いしてます。
0コメント