平成28年(2016)4月1日に施行された障害者差別解消法が、令和3年(2021年)5月改正され令和6年4月1日より施行されます。
今まで全国で実施してきたユニバーサルツーリズム、バリアフリー観光推進セミナー等で聞かれたり、触れる機会が多かったキーワードの一つなのでご紹介します。
旅行業、宿泊、交通、飲食、観光地、そして自治体の方々はまずは法律の理解を!
2016年当時、JATA(日本旅行業協会)ユニバーサルツーリズム推進部会のメンバーだった私は、旅行業における同法の対応について携わり、会員(旅行会社)向けに「障がいのある方の旅行参加を推進するための手引き」が部会で取りまとめました。
その後、平成30年(2018)には、観光庁発行の「高齢の方・障害のある方などをお迎えするための接遇マニュアル」(旅行業編)につながっています。
※観光庁のサイトには、旅行業以外に宿泊施設編、観光地域編も公開されています。
事業者による障害のある人への合理的配慮は努力義務→義務化へ
今まで行政機関等は義務として対応していた合理的配慮が民間事業者も義務化されるということが、今回の改正で重要なポイントになります。
そもそも「障害者差別解消法」ってなに?「合理的配慮」って?事業者ってうちも含まれるの?
という事業者の方や従業員・アルバイトまで伝わっていないという方も多いのではないでしょうか。
内閣府のサイトでは、初めて目にする方でも理解しやすいリーフレットや事例集などが公開されていますので、観光に携わるあらゆる業種の方々はまずは事業所内での共有をおすすめします。
〇リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」
リーフレットを読んだ印象としては5年間の事例が反映され当初のものより事業者、障害当事者が理解しやすく改定されていると思いました。
一番重要なのは「建設的対話」で多くは解決できることです!
観光業は施設や地域に来た方が「楽しかった!また来るよ!」と喜んでいただくサービスを提供するのが仕事です。
その対象は、高齢者、障がい者、乳幼児連れ、外国人、誰もが楽しめることが何よりですよね。
リーフレットや事例だけに頼って、この対応は〇、これは✕と考えるのではなく、一旦はご要望をお聞きした上で、それぞれの施設や地域で「できること」「できないこと」をお客様と相談しながら探っていくと、〇か✕だけではなく中間の△ですごく楽しんでいただけることが作れるかも?
(視覚障がい者 夢の自動車運転ツアーinツインリンクもてぎ)
私は20年以上ユニバーサルツーリズム(バリアフリーツアー)の運営に携わってきた中で、何度もこんなやり取りをお客様と繰り返してきました。
なぜなら車いすを使用している方も10人いたら10通りお身体の状況は異なるからです。手動車いす、簡易電動車いす、100㎏以上の重たい電動車いす、全く歩けない方、バスのステップが上がれる方、視覚障がい者のお客様も、全盲、弱視、盲導犬ユーザー、中高年になって視力がなくなった方、対応は一律ではないですよね。
これだけ読むと大変そうという印象だけを持たれるかもしれませんが、従来観光業はお客様の不安や困りごとを解消したり、体験したいことを実現したりという相談を受けながら対応し、来訪者に喜んでいただけるサービスを提供してきました。
旅行をあきらめていた方が実現できた時の喜びを共有できる、観光業に携わってきてこんなに嬉しい経験はありません。私自身、何度もこのような経験をしてきました。
まずは正しい理解で誰もが楽しめる旅行を!
office FUCHI 〜オフィス・フチ〜 〈渕山知弘〉
渕山知弘 office Fuchiのサイト 東京2020オリンピック・パラリンピックを契機に宿泊、交通、観光のバリアフリー化が加速し「心のバリアフリー」が推進されています。 大手旅行会社で30年勤務し、そのうち22年間バリアフリー旅行、ユニバーサルツーリズムに携わった経験を活かして、全国の自治体、企業、学校等のユニバーサルツーリズムの推進をさいたま市の見沼田んぼの片隅からお手伝いしてます。
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