祭り・イベントのバリアフリー対応と誘客について


これは、7年に1度開催される諏訪御柱祭(下諏訪町・長野県)1200年の歴史で初めて車いす桟敷席が設置され、旅行会社(近畿日本ツーリスト)、旅行介助サポート(ユニサポすわ)が連携して企画し発売予定だった宿泊プランです。

※残念ながら2月22日、コロナ禍の影響を受け観覧は中止が決定されました。

しかし、このような取組みは全国の祭り、花火、イベント等で参考になると思い記録を残す意味でご紹介します。

まず、お会いして感銘を受けたのは、下諏訪町役場の御柱祭ご担当者の車いす席設置に対する思いでした。何としても設置して、より多くの方に楽しんでいただきたいという気持ちが私たちにも伝わってきました。

(下諏訪町 御柱祭特設ページより)

年末に車いす席が設置されることが発表され、まず行ったのは会場の下見です。


会場がどのような立地条件なのか、そこで想定されるハード面のバリアは何か?、そのバリアをどのように工夫すればご案内できるか?を、旅行介助サポート団体「ユニサポすわ」の牛山代表、古村さん、国内で先進的にユニバーサルツーリズムに取組む富士見高原リゾートの藤田課長と一緒に確認をしました。


道路から坂を下った先の河川敷に車いす用桟敷席も設置されることや、パンフレットに記載されているトイレの位置などをイメージしました。(2022年1月11日)

※一般向けの販売に際して、このような下見をすることはほとんどありませんが、車いす席を検討する際には、マップや写真だけで議論せず必ず現場の確認が重要になります。

多くの地域では、運営に携わる方々が必ずしも障がい者・高齢者の受け入れの経験があるわけではなく、両者の連携から準備すべき対応が見えてくるからです。


そして、諸条件が決まり始めたタイミングで、町役場、旅行会社、旅行介助サポート、3者が揃い販売に際しての具体的な動線の確認や、さらに対応が必要な事項の整理などを行いました。ここでの打合せで、関係者の役割は明確になり販売・受入れの準備に入ることができます。

旅行会社としては、一般客の問合せにはHP上で公開されている情報の提供で十分ですが、車いす利用者や足腰が不安なシニア層からの問合せに対しては、バス乗降場所から会場までの距離や時間、道路から河川敷までの坂の状況などを知ることで、リアルエージェントならではの情報提供が可能になり、販売サイトで何を記載すれば良いかがわかります。

※関係者(特にユニバーサルツーリズムの経験者)が集って下見をすることで、販売に際しての懸念材料はその場で解決でき、運営側、販売側いずれにとっても有益なものになります。(2022年2月4日)


まとめ
全国の地域で受け継がれる祭り、花火、イベントの多くは、会場がバリアフリーじゃない、バリアフリートイレがない、人が多すぎるなどで、バリアフリー対応の受入れを躊躇されるケースが多いと感じます。しかし、その一つ一つを知見を持つ方との連携で検証していくと、必ず何かしらの対応策が見えてきます。
地域外からの誘客も重要ですが、まずはその地域に住む高齢者(以前は祭りで大活躍していた方々)に楽しんでもらえるような対応から着手してみてはどうでしょうか。


0コメント

  • 1000 / 1000

office FUCHI 〜オフィス・フチ〜 〈渕山知弘〉

渕山知弘 office Fuchiのサイト 東京2020オリンピック・パラリンピックを契機に宿泊、交通、観光のバリアフリー化が加速し「心のバリアフリー」が推進されています。 大手旅行会社で30年勤務し、そのうち22年間バリアフリー旅行、ユニバーサルツーリズムに携わった経験を活かして、全国の自治体、企業、学校等のユニバーサルツーリズムの推進をさいたま市の見沼田んぼの片隅からお手伝いしてます。